第471回 黒字倒産と経営者

 金融リスクという課題がある。

 広義においては金融商品、有価証券取引等において起こりうる価値の減少等によって引き起こされる現象であり、それに備える手段として様々あるが代表的なもので言えば保険商品の活用などがある。

 しかし、中小企業等において起こりうる金融リスクとはこのような有価証券取引上の問題よりも、主に掛け取引や手形等においての場面である。

 例えば、よく耳にする言葉として『黒字倒産』というものがある。

 企業の成績は黒字であるにも関わらず、支払いが行えずに倒産してしまうというものである。

 このからくりを紐解いていきたい。

 そもそもなぜ黒字倒産という自称が発生するのか。

 それは、入金と支払いのサイクルの時間差によるものである。

 例えば入金の予定は掛けで行われたため2ヵ月後となる。

 経理では実際の入金が無くても、売り上げた時点で『売上』として計上される。

 会計でいえば相手勘定科目は売掛金となり、この処理にまったく問題は無いのである。

 しかし、支払いがその入金までの間に発生し、その額が今の銀行残高よりも高額だった場合支払いが行えない状況が発生したり、入金されるべき相手が倒産をしてしまい入金がなくなったりする。

 この状況が立ち行かなくなった状態の時、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、しっかり売上を上げているにもかかわらず払えるものが無く倒産してしまう、かりに1ヵ月後には確実に入金があるとしてもである。

 もちろん、対策は様々ある。

 地道な例で言えば、支払いを1ヶ月まってもらうことや、銀行から短期的に借り入れを起こす、手形の場合裏書で支払いをする、手形の割引をするなど実際の現場ではあの手この手でこのような黒字倒産を起こらないように対策をしている。

 では、大切なことは何か。

 それは、通常管理する損益計算だけでは見えてこない、実際のお金の有無を把握する、いわゆるキャッシュフローの流れを抑えることである。

 そして、いつ入金がありいつ支払いがあるかキャッシュフローの流れを管理し、それにあわせてきっちりと対策を行うことなのである。

 そのため、経営者は数字に強くなければならない。

 なかなか現場という場面から会計に携わるということは難しいかもしれないが経営者は数字をしっかり把握し、強くなるひつ必要が必ずあるのである。

 数字に強い経営者をぜひ目指していただきたい。