第349回 スピード感と自らの変化がキーワード

 年が明け、新たな気持ちで旅館経営に取り組んでいる多くの経営者は、相変わらず極めて不透明・不安定な外的環境に対して、どのような準備をしていけばよいのか、実はよく分からないというのが本音だろう。

 経営の現場ではスピード感が重要な要素であり、顕在化した課題の解決に速く取り組まないと、次の課題が訪れる。

 最悪のパターンは課題に立ち向かうことを、先送りすることにより、何から手をつけてよいのか、全く分からなくなってしまうことである。

 こうなると、対処の遅さが悪い結果として重なってくる。

 このような経験は二度としたくないと思いつつも、何度も繰り返してしまうということはないだろうか。

 世の中には変えられないことと、変えられることがある。前者は過去と他人と外的環境であり、後者は未来と自分と内的環境である。

 過去と未来は説明するまでもない。

 部下等の他人には、考え方や行動を自ら変えてもらうための努力を経営者はし続けなければならないが、変えようとする気になるかどうかは結局本人次第である。

 景気や消費税増税等、外的環境は、自分だけで変えられるレベルの話ではない。

 しかし自分の旅館の仕組みや提供商品、スタッフの動きは、努力と工夫次第では変えられる可能性がある。

 旅館経営を取り巻く外的環境の厳しさを嘆いてばかりで、結局何もしないでいては、現状維持ではすまされない。

 確実に衰退してしまうのである。

 それを望まないのであれば、現状を直視し、今までと同じ考え方や行動では解決しないと判断したら、思い切って自ら変化していくしかないのではないか。

 人は一般的に変化することを嫌う。

 なぜならばその為には何らかの犠牲を払わなければならず、多くのパワーが必要となるからだ。

 それを乗り越えて自ら変化をする人(旅館)と、そうでない人(旅館)には、大きな差がついてしまう。

 今年のテーマはスピード感を持って仕事に当たり、自らを変化させて新しいことをする。

 このような考え方と行動が基本姿勢となる旅館を創っていきたいものだ。

 今年は明るい年になってほしいと誰もが願っている。

 しかし願うだけではだめだ。

 自ら明るい年にしなければならない。

第348回 中小企業再生支援協議会の判断基準

 中小企業再生支援協議会へ相談を持ちかける企業は後を絶たない。

 そのなかで、観光地を抱える地域においては旅館業の件数はかなりの数を上げている。

 金融債務が膨らみ、自力で約定通りの返済が不可能になったため、金融機関の進めもあり、協議会案件にあげてもらおうという動きである。

 協議会発足当時は、実績数をあげる必要性があったのかもしれないが、限られた期間で調査を行い、再生計画書を経済産業省へ提出するという動きが一部見られたようだ。

 しかし、このような案件は、結局計画通りにはいかず、途中で頓挫し、法的整理に移ったケースも多々ある。

 したがって、協議会の存在意義を再度確立するためにも、再生する可能性の高い企業であるかどうかを精査することに、協議会は慎重になっているものと思われる。

 中小企業再生支援協議会の事業実施要領には、「実質的に債務超過である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から三~五年以内を目処に実質的な債務超過を解消する内容とする」「経常利益が赤字である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業開始の日から概ね三年以内を目処に黒字に転換する内容とする」と言う記述がある。

 つまり、最初のハードルは三年以内に「フル償却をして」経常黒字になることができる企業であることなのだ。

 この見込みが無いところには、協議会としての再生支援はできないとしている。

 これは客観的にみれば、国の税金を一部投入して再生支援をする立場としては、きわめて当然である。

 案件を挙げようとする旅館や金融機関も、このことをまずもって充分認識しておく必要がある。

 ではその判断材料は何かと言うと、直近の実績が黒字化へ向かっているかどうかである。

 旅館の場合、売上高、入込数、客単価、稼働率、利益(損失)額を数年にわたり、毎月のデータで確認し、見込みがあるかどうかを判断する。

 そしてその土俵に上れば、中期的にみてDDS等の支援を行う事により、債務超過を解消する数値計画とそのためのアクションを取り込むことになる。

 過去の債務を棚上げしても再生できないところは案件にはあがらない。