第305回 利益を出せる旅館出せない旅館

 年は改まったが、旅館業界を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況であることに変わりはない。

 昨年は、「中小企業金融円滑化法」の施行により、各金融機関はリスケを要求した旅館に対し、積極的に応じてきた。
 
 この結果、中期的に見れば、一時しのぎではあるが、資金繰りが厳しい旅館にとっては返済の猶予が認められ、何とか年を越せたと感じている経営者も多いことだろう。

 しかし一方で、いわゆる第二会社方式で債務を飛ばすことを考えていた旅館に対し、債権者である金融機関は「それは認めない」として緊急避難的に会社更生法を申請し、事業譲渡をストップさせることも起きている。

 会社更生法だと代表者以下、経営者を排除するため、新しい運営組織が必要になるが、これがスムーズにいかないと、金融機関としてもこのスキームが頓挫してしまうことになる。

 また、中小企業再生支援協議会に持ち込まれる案件についても、要はメインの金融機関が、対象となっている旅館をどのようにするかで、結論が決まる。

 しかし、その方向性が途中二転三転するケースもあり、結局は金融機関に差し戻されるケースもある。

 このように、メインの金融機関の都合や状況により、対象となる旅館の運命が決まるといっても過言ではない。

 また、旅館名は変わらないため、マスコミには載らないものの、オーナーチェンジによるものも含めると、「再生」と称する旅館経営の再編が今年も続いていくことが予想される。

 このような旅館を取り巻く外部経営環境は自ら変えることはできない。したがって、各旅館が最優先に目指すことは、減価償却を行ったうえで単年度黒字を出すことである。

これは、例え多額の債務があったとしても、この旅館が事業継続を行う力があると判断される。この前提があるのとないのとでは、金融機関の方向性が百八十度違う。

 事業経営として利益が出せれば存続の可能性が高く、出せなければ何らかの形で市場から退場するという、極めてシンプルな基準である。

 これをいかにして達成させるか、経営者の戦いが今年も続いていく。