第282回 宿泊モニターを有効活用する

 ある旅館で館内アンケートやネット系エージェントの口コミサイトで利用客のコメントを追っていた。

  たまにではあるが、猛烈なクレームとともに極端に低い評点しか与えられない場合がある。

しかも総じて全ての評価が低くなる傾向が強い。つまりその客にとって極めて悪い感情が生まれた場合、それ以外のものも全て悪い印象になってしまうのである。

 この旅館では、そのようなクレームに至る前の段階で予兆を発見し、事前に改善を図る動きを社長中心に取り組んでいる。

 その方法は、宿泊のモニタリングである。公募による宿泊モニターを募集し必要チェック事項および主観的な感想も含めた客目線での商品チェックを不定期に実施しているのである。

 アンケートや口コミは絶対量が少ないため、これだけでは判断材料としては物足りない。そこで、モニタリングを活用することで館内の生情報を顧客の立場から提供してもらうことにしているのである。

 モニタリングにおいては客観的事実を報告しそれに対してどのように感じたかを思いのままにのべるパターンである。

 この制度を取り入れる前は、クレームや問題点が浮き彫りになってからはじめて旅館として対応に動き出すという流れだった。しかしそれでは後手に回ると判断したこの経営者は、まず現状の課題抽出にパワーを投入したのである。

 その結果、館内の日常の動きが手に取るようにわかるようになってきた。そして、今まで気づかなかった旅館や従業員の都合第一主義のオペレーションを顧客感情主義のオペレーションに変えていく機軸となったのである。

 スタッフ同士が問題点を指摘しあうと、どうしても現場がぎくしゃくし本当のことを言えない場合が出てくる。

 しかし、しがらみのない第三者のモニターの指摘は非常にドライかつ客観的である。したがって、それが課題であるという認識をスタッフが共有するのに時間がかからない。だからすぐ改善のためのプロセスに移行できるメリットがある。

 モニタリングによって提供商品やオペレーションの向上を図ることは、かなり有効な手段だ。