第447回 低価格戦略の失敗事例 テレビ番組

 マスコミに取材、取り上げられるとその効果は非常に大きい。

 特に、テレビで特集が組まれた場合、番組終了後から電話がなりっぱなしで、1~2ヶ月先の予約まですべて埋まってしまうなんて話も耳にする。

 とにかくその効果は絶大と言える。

 しかし、このテレビを使った広告宣伝には3つの問題がある。

 1つめは表示価格の問題である。

 テレビ等で表示される宿泊料金は、多くの場合1泊2食付の最低料金の場合が多く、また、○○○○円~といった一見すると一つの料金しかないように紹介されてしまう。

 旅館側としては、様々な商品があるにも関わらず、テレビの放映後はその価格帯が多く売れる。

 この商品の利益率がいい場合にはあまり問題は無いのだが、利幅の少ない商品の場合、他の商品は売れないと言うことよりを圧迫してしまい、結果としてものすごく忙しかったのに利益が残らなかったなんて話も数多く存在する。

 さらに最近では、その番組を見た人しか予約できない限定プランを作成して欲しいといわれる場合が多く、その多くが価格アプローチ、つまり、テレビを見て予約した人限定の安価なプランを作ってほしいと言われるのである。

 これでは利益幅はますます小さくなってしまう。

 2つめは上記の問題と関連するのだが、低価格商品を開発するために質を下げてしまうと言うことである。

 特に食材原価に関して安易に下げてしまうと、顧客満足度自体も下がってしまい、さらにいまやネットの時代なので、そのクチコミがあっという間に広がってしまう。

 ネットの恐ろしいところは、そのクチコミが残念な評価だとしてもなかなか消せないと言うことである。

 そのため、追加で言えば、忙しかったのに利益が残らず、その後の新規のリピーターの獲得につながらない上、ネットで検索された場合、悪評が閲覧されてしまいその後の新規客獲得が難しいという事態に陥ってしまう。

 3つめは時期の問題である。

 テレビとしても、ハイシーズン前に特集したい。

 その方が視聴率が取れるからである。

 しかし、ハイシーズンは旅館も好景気なので、比較的集客できる時期の場合、生産性の高い高粗利の商品も圧迫し、本来稼げたであろう部分も消えてしまう。

 そのための機会損失はかなり大きい。

 テレビや雑誌に取り上げられた場合、その宣伝効果は高いと言える。

 しかし、そのためには、事前にきっちり利益を生み出す商品を開発しなければならないし、そして、時期も検討し、なるべくオフシーズンに近づけることが必要となってくるのである。