第430回 安心・安全神話の危険

 先般、中国ビジネスに精通している方と話し合う機会があった。

 マスコミが報道する中国との険悪な状況は、どうも一部の特殊事情のようで、中国の富裕層の日本に対する投資欲は、まだまだ衰えていないようである。

 日本それとは桁違いな超リッチ層が今、猛烈に志向しているのは日本の特別養護やディサービス等の「老健施設」だそうだ。

 老い先長い自らの将来に対する不安、特に中国の環境汚染の現状や、水、食に対する安全性への不信感は、中国内に居る限り払拭できないこと良く知っている。

 中国国内を移動するよりはるかに近い日本は、世界一安全であり安心であることを一番良く知っているのである。

 老後や終の住まいを「日本ですごしたい」と考える中国人は年々増しているようである。

 それがビジネスとして投資の対象になるのであれば、馬鹿儲けせずとも、おのずから注目株であること自明の理であろう。

 インバウンドを考えるに、「おもてなし」と共に日本が世界に誇るべき最大のセールスポイントが「安心・安全」であることと考える。

 そんな信頼をぶち壊すべきニュースが今話題となっている。

 サービスの極致と言われ、多くのファンから尊敬の眼で慕われてきた某有名ホテルが、食品の表示偽装問題視されている。

 食の安心・安全を根底から覆す事案ではないかもしれないが、真偽のほどは時間を待つことになる。

 どちらにしろ、計り知れない失望と、絶大なる信頼を失墜したこと間違いない事実である。

 消費者、旅行者の食に対する信頼は、ホテル・旅館に対しては絶対的なものがある。

 益々そのニーズは徐々に期待度が高まり、付加価値を特段に要求するようになって来た。

 地域の特別な、あるいは新鮮な「味」との触れ合いは、旅の大きな楽しみになっている。

 各地のホテル・旅館で実施されてきた「地産地消」、「地酒の飲み比較」、そのために遠くまでわざわざ来て頂いたお客様がいる。

 その地産地消が嘘だったら…と考えるともう、「騙(だま)し」の世界かもしれない。

 これからの日本観光の主体になるべく「インバウンド」施策、東北の震災後何とか再スタートしたところである。

 原子力の放射能疑惑の安全性が、やっとどうにか理解されてきた矢先である。ラグビーのワールドカップ、2020年の東京オリンピック開催も正式決定され、明るい話題が目の前に存在する今、安心・安全なクール・ジャパンを世界に向けてアピールすべきこの時である。

 当該ホテルには、一刻も早い修復改善を、切に望むところである。