第275回 二次消費を立て直すために

 二次消費の売上があがらない。どの旅館でも共通の課題である。

 部門長が集まる毎月の会議を聞いていると、決まって今月は団体客が少ないから二次消費が上がらなかったという理由が担当者から述べられる。

 だから団体客が激減した今日、二次消費の売上は、はなから見込めないと宣言しているように聞こえる。

 たしかに、景気のいい頃は宴会場から二次会場へ多くの客が流れ宿泊単価は低くても高額の付帯売上が経営を支えていた時代があった。

 確実にそのような時代は過ぎ去り、店を開けていれば自動的に売上がたつことはなくなった。

 ところがこの旅館では、そのような時代や客の変化に対して何か対策を打っているのかというと、実は何もしていないのである。バブルのころ作られたグランドクラブは客がまったくいない状態で数人のスタッフが手持ち無沙汰にいるだけである。

 少なくとも、夕食が終わって館内を歩いている客が少量のドリンクとカラオケが手軽な料金で利用できるしくみづくりと告知は、館内いたるところでできるはずである。売店や大浴場にだって、このような館内販促の場を設けることも可能だ。タイムサービスの割引チケットを配ることもできるはずである。このような来店のハードルを可能な限り低くして、まず利用してもらうための工夫を旅館はすべきであって、前年対比の数字をにらんでばかりでは、らちがあかない。

 売店も同様で、全てを業者まかせにしてしまった結果、ほとんど一部の決まった商品しか回転しない結果となっている。ちなみに売上・利益額・数量のABC分析をすれば大部分の商品がただ陳列されているだけだということがわかる。ならば、思い切ってそのスペースを他では扱っていない地元特産品コーナーとし、試食を伴った側面販売をするだけで売上アップを誘導することが可能である。

 二次消費はあがらないものだと自ら決め付けるのではなく、客に財布の紐を自然にあけてもらうにはどのような取り組みが必要かを、客の感情という視点で仮説を立て、検証してみることを繰り返してほしい。反応は必ず結果となって出てくる。