第401回 相手を知り、己を知れば 金融機関との交渉 ②

 金融機関の立場を理解して、相手のことも考え、交渉しようということで、前回は企業の借入の際に金融機関側では引当金を積まなければいけないという話をした。

 そして、今回は、その引当金の基準となる債務者区分、いわゆる企業の格付けについて触れていきたいと思う。

 金融機関の引当金の割合は、この債務者区分によって変わってくる。

 その割合は金融機関によってまちまちではあるものの、その評価方法はほぼ決められている。

 それは、金融庁が決めた『金融検査マニュアル』に基づいて行われ、そして、その評価のほとんどが決算書によって行われる。

 その評価方法の一部を、評価の順に従って紹介していきたい。

 まず、評価の第一段階において、決算書に基づく定量分析が行われる。

 いわゆる数字での判断である。

 例えば、自己資本比率といった安全性についてや、経常利益増加率といった成長性、債務償還年数などの債務返済能力について分析が行われる。

 この第一段階において、概ねの債務者区分が決定する。

 その後、数字の上には表れない第二段階において、経営者の資質、技術力や販売力といった部分が分析され、そして第三段階で返済能力、そして経営責任能力としてオーナーの資産力や過去の返済実績などが分析され最終的な債務者区分につながっていく。

 しかし、前述のとおり、多くの場合は決算書による数字の分析で概ね決まってしまい、その後の段階で債務者区分が大きく変わるということは稀なケースと言えるであろう。

 ただ、稀なケースとはいえ、決算書の数字のみで判断されるには厳しい場合、この第二・第三段階の判断を大きく加算してもらう現実がある。

 そのための工夫と対策が必要になる。

 それは、決算書をそのまま提出するのではなく、もちろん、利益を水増しするなどの粉飾や、法を犯すことを行うのではなく、数字上に表れない部分を、評価の第二・第三段階で大きく加味してもらえるようにする金融機関側に伝えること、そして理解してもらうことである。

 その具体的な方法の一つとして、経営計画の策定などがある。

 次回は金融機関の評価を上げるにはどのようにしたらよいのか、その経営計画も含めその具体的な手法についていくつか取り上げていきたい。