第381回 今だから考える『おもてなし』とは③

 100-1はいくつだろう。

 普通に考えれば、誰もが99と答える。

 それが当たり前ではあるが、サービス業においてはその通りではない、特にホテル・旅館業は。

 2つほど実際に起こった話を書きたい。

 1つは旅館業での話である。

 女性二人組が東北のある旅館へ宿泊した。

 その旅館はサービスに重きを置いており、接客係はもちろん、フロント、清掃スタッフに至るまで、挨拶等は徹底しており、その女性客はとても気分良く過ごせた。

 料理もこだわっており、地のものを活かし大変満足した。

 チェックアウト時には、接客係はもちろん、女将もお客様のお見送りに出ており、帰りも気持ちよく旅館を後にした。

 しかし、問題は駐車場の担当係にあった。

 旅館を後にした2人は、やや離れたところにある旅館の駐車場に車を取りに行った。

 そこで、駐車場担当のスタッフが喫煙をしており、その吸殻を道端に捨てた、ポイ捨てをということである。その女性客は非常に腹が立ちそのスタッフにポイ捨てをしないように注意したということだが。

 ここで、考えてみてほしいのは、その女性客は再びリピータとしてこの旅館に泊まろうと思うだろうか。

 答えは否だと思う。旅館が一生懸命に誠心誠意を込めてお客様をおもてなし、調理長が丹精込めて食事を用意し、お客様のために真心込めたにもかかわらず、駐車場係のなんでもない行動ひとつですべて台無しになってしまったのである。

 次に寿司屋の話である。

 ある有名すし店に見習いとして就職した青年がいた。その青年は見習い期間中、毎日毎日、かっぱ巻きを作っていた。

 多い日は、1日中何百本もかっぱ巻きを作っていた。そんなある日、出前先のお客から一本のクレームをもらった。かっぱ巻きにキュウリが入っていなかったということだ。

 それに対して、寿司屋の主人は見習いを怒った。

 すると見習いの青年は、今まで何千本とかっぱ巻きを作ってきた、1本だけでそんなに怒られるのは納得がいかないと反論した。

 すると主人が、お前からすれば1000本のうちの1本かもしれないが、お客様にしてみればその1本がうちのかっぱ巻きのすべてになると。

 この2つのエピソードより、100-1はサービス業においては99ではなく、場合によっては“0”になってしまうということが言える。

 難しいことだが、サービス、ホスピタリティを高めるのであれば、お客様に係るすべての人間が、自分の都合ではなく、相手の立場に立って考えることをしなければならないのである。