第361回 受身体質からの脱却を目指せ

 宿泊単価の低下は、収益を生まない体質の現れであるということを何度も述べてきた。

 いわゆる単価破壊は、旅館業界に限ったことではなく、あらゆるところで見受けられる現象となっている。

 利用客からすれば、同じ商品やサービスならば、少しでも安い方がいいのに決まっている。

 エンドユーザーに直接商品を売る立場にあるところは、利幅が少ない低料金であっても、大量に商品を売ることにより、粗利額を確保しようとする。

 その背景には仕入先に対して大幅な価格の削減を要求し、個々の金額を呑むか呑まないかの選択を迫るものもある。

 この構造を旅館に置き換えると、相手先のエージェントや大口の団体から料金提示を受け、全くゼロになるよりは、低単価でも数をこなす方がよいという判断がなされるのである。

 このようなケースが後を絶たず、現場ではコストダウンを実施し続けてはいるものの、ほとんどの場合、欠損が生じてしまう。

 営業の現場では、価格はもう落とせないので、飲み物をサービスする等のプランを提示して成約を目指している。

 しかしこの結果、追加の飲み物や2次消費が期待できず、現場スタッフの士気の低下にもつながっていく。

 ある旅館では、この傾向に歯止めをかけるために、まずエージェントに対する経費がいくらかかっており、実際の粗利額がいくらなのかを分析した。

 具体的には、手数料はもちろん、協賛金や販促費、交通費、付き合い旅行の経費等をエージェント別に算出した。

 さらにこの経費率を、宿泊料金別にかけて、それぞれ裸の金額を出したのである。

 その結果、エージェントによって、経費比率は8%から25%を超えるまで実に幅が広いことがわかった。

 さらに業者別の顧客特性、つまり2次消費が多い客層を持っているとか、平日に送客が期待できる等の要因を加味する。

 このようにして、現在受けているエージェントや顧客の実際の単価が、当館にとって、今後もこのまま受けていくべきかどうかの判断材料にしたのである。

 この旅館では、宿泊料金については顧客やエージェントの言いなりでは受けないという体質が出来上がってきた。