第266回 計画が頓挫する繰り返しを絶つ

 提供商品の品質アップや業務改善の取り組みについては、このコラムで何度となく取り上げてきた。

 明確な理想の姿(あるべき旅館像)を描き、現状とのギャップを認識し、理想のところまで引き上げることは経営者の重要な仕事である。

 ところが現実には、途中で失速してしまう場合が結構多いのではないか。

 極めて当たり前のことであるが、ビジネスは結果が全てである。いくら良いプロセスを描いても、何らかの理由で目指す結果にたどり着けなければ、何もやらないのと結局同じなのである。

 経営戦略を実践していくときに、よく使われるのがPDCA(Plan,Do,Check,Action)サイクルである。

 これがうまく機能していかないのは、計画を立てて(P)実行(D)したところ(C)問題が発生し、中止(Stop)となるケースである。ここで重要なことは、Checkをしたことで新たに発生した課題をクリアして、目標に達成させるための再計画(P)を練ってアクション(A)に結び付けられるかどうかである。実はこれがとても大きなエネルギーが必要であり、ここでめげるケースがほとんどだ。

 今、どの旅館も集客アップを全力で取り組んでいる。旅館ごとに明らかになっている集客目標を達成させるためには、提供商品や業務オペレーション、営業方法等に至るまで、全てにおいて見直しを図る必要がある。

 そして目指すところまで到達するために、プロセスの途中で明確になった障害を乗り越え、やりきるという成功事例を何としても作らなければならない。

 うまくいかないところは過去に成功したかもしれないが、今は通用しない方法を繰り返し、途中で挫折してしまうパターンなのである。

 旅館は様々な役割のスタッフが同時に働いており、これらの人々が経営者の意向に沿った動きをしてもらわなければならない。

 このためには、指示を出して迅速に動く組織が出来上がっていればいいが、そんなうまい話はあまりない。ならばまず経営者自らが今までと違った動きをするところから始めるべきだ。旅館が変わる原点は、経営者の考えと動きが変わることである。