第355回 青森県庁の複合的取組み

 縁あって青森県内にある複数の旅館に対するコンサルを実施している。

 これは青森県庁の観光企画課と経営支援課の合同事業である「あおもり観光産業収益力向上事業」の中に位置づけられたものである。

 行政は部署によって役割が明確に定められ、それぞれの行政サービスがおこなわれている。

 しかしサービスを受ける側からすると、いわゆる縦割り行政が現場の課題解決にとって大きな障害となっていることが多く見られる。

 例えば観光企画課は県内観光イベントの企画・開催に特化する姿勢があり、一方経営支援課は、事業所の経営改善指導に特化するというものだ。

 対象事業所となる旅館から見た場合、それぞれの特性をうまく分けて捉えればすむのかもしれない。

 しかし、今回の取り組みは、違う部署同士が連携することにより、旅館に対して複合的なアドバイスを実施することができるという画期的な取り組みといえる。

 具体的には業務オペレーション改善や仕入れ・在庫管理体制の見直しを図るとともに、旅館内部の強みを認識し、その旅館ならではの提供商品を強化していくプロセスを同時に実施している。

 この間、事務局としての各課の担当者はコンサル・旅館と常に連携を保ちながら事業を展開している。

 事業や業務の効率性と提供商品の付加価値アップによる収益力アップを図るには、その過程において様々な困難が生ずる。

 金融機関もこの両方を旅館に求める。

 例えば目標売上に達しないから、人件費を抑えろという。

 その結果、スタッフが減り、満足できるサービスが提供できず、結果として、集客がダウンし損失の幅がひろがるという悪循環である。

 この難解な課題を解決していくには、創意工夫により果敢に取り組むしかない。

 例えばある旅館では中途半端な会席料理の提供をやめた。

 そのかわり郷土料理のハーフバイキングの提供とともに、青森特産のリンゴの食べ比べを取り入れたエンターティメントレストランを企画している。

 自館の強みを取り入れた他に類のない楽しい夕食を演出することにより、スタッフの提供サービスの内容を思い切って変える。

 現状のマイナス要因をはるかに超える楽しさが、顧客の満足をえるという仕組みができあがりつつある。