第335回 内的要因に真正面から取り組む

 ある旅館の朝、階段の踊り場に客室で使用したシーツが無造作に積み上げられていた。

 よくある風景である。

 担当者はチェックアウトした客室から出来るだけ効率よく清掃にかかりたいという気持ちから、この行動が起こる。

 この旅館では、以前あちこちでこの光景が見られた。

 あまりに見苦しいので経営者にそのことを伝えたところ、直置きはせず、必ず専用のかごに入れるという決まりを早速作った。

 現場のチェックがおろそかになっていたことは問題だが、すぐに改善を指示したスピード感はとてもすばらしかった。

 ところが数ヵ月後、冒頭の出来事が発生した。

 偶然そのことが経営者に伝わったため、早速担当者を特定し注意するとともに、清掃スタッフ全員に、再度仕事の段取りと注意点を指導した。

 この旅館は、このような細かいことを常に顧客目線を基軸にして決まりごとを作り、現場に指導している。

 そしてしばらくしてそのほころびが見え始めると、再度緊張感を持ってもらうよう指導を繰り返す日々である。
 
 旅館は多くのスタッフが働き、人の異動もある。

 また、一度決められたことも日常の慣れが少しずつその形を崩していくことが多い。

 だからこの経営者は常に現場を見て廻っている。
 
 日常の業務が忙しくなればなるほど、それをこなすことでせいいっぱいになり、仕事が粗くなりがちである。

 八月の繁忙期にクレームが多いのは、これもひとつの原因ではないだろうか。
 
 顧客よりも自分の都合が優先される行動になるのはよくあることだ。

 しかしそれは顧客を失うことになる重大な要因である。

 それをさせないようにするには、繰り返し現場でのチェックと指導を行うのと同時に、更なる業務オペレーションの改善が必要になるケースもある。

 その判断を常に経営サイドはしていかなければならない。
 
 今、客足が遠ざかり集客に悩んでいる旅館は多い。

 その原因が外的要因に起因すると考えられがちであるが、決してそれだけではない。

 よりいっそう厳しい環境下にあって、旅館の内的要因について、真正面から取り組んでいる旅館が評価されるのである。