第330回 「信頼」を失わないために

 ビジネスはもちろんのこと、人との付き合いにおいても最も重要な要素のひとつとしてあげられるのは「信頼」だ。

 物事がうまくいっているときはいいが、そうでないときに、この信頼を裏切る行為が時として発生する。

 たとえば約束した納期を守らない。

 支払延長を何の連絡も無く実施する、等々。事が大きくなると、事業の存続に影響する事態にもなりかねない。

 信頼されない人や企業と言うのは、そのような行為を繰り返す。

 だから、ある時点でこれ以上付き合うのはよそうということで縁が切れてしまう。

 人も企業も単独では存続し得ない。

 周りから多くの支えや支援があってはじめて成り立っていくものだ。

 ところが信頼できない人や企業は自己の都合を最優先に捉えて行動する。だから、時として相手を傷つけても何とも思わない。

 毎日の経営においては、さまざまな意思決定を連続しておこなう。

 その結果は関係者にとって必ずしも満足する結果とは限らない。

 考え方や立場が変われば正反対の感情を抱くことのほうがむしろ多い。

 それでもひとつの結論を出して、進む方向を明確にしなければならない場合、その理由と関係者へのフォローアップを忘れないことがとても重要だ。

 信頼を得るということは、相手の満足する結果を出し続けることではない。

 自分とは違う相手の立場や考え方を理解し、それを踏まえた上で自分の行動について理解してもらうことである。

 腹のそこから納得はしなくても、相手にも立場の違いを認識してもらうことで、人も企業も大人の付き合いができる。

 厳しい経営環境の中にあって、殺伐とした人間関係や企業間の出来事が多い。

 しかし、人や企業の「誇り」としてとして、信頼される行為を実践することが大事だ。
 
 「自分の周りはすべてがお客様」という考え方がある。

 周りの人に少しでも今以上に喜んでもらうために、今時分には何が出来るか?

 これを忘れた旅館や経営者そしてスタッフは、必ず周りが離れていく。

 ビジネスモデルは理屈だけでは決して成り立たない。

 なぜならばその先には感情を持った「人」がいるからである。

 思いやりや「おもてなしの心」の原点がここにある。