第262回 手立てを打てない旅館

 エージェントと一応契約してはいるが、企画商品には載らない小規模旅館は数の上からすると、非常に多い。

 送客においても、何かの拍子であふれたので、面倒みてほしいと言ってくる。このような旅館は、集客の計画も立ちづらく、営業データもそろっていない。だから、分析をするにも決算書等限られた財務データしかないという状況である。

 さて、このような立場の旅館であっても、これから生き残るための手段を自ら構築していかなければならないのは、どこも同じである。
 典型的なパターンを紹介すると、宿泊単価は一万円前後。年々入り込みが減少し続けている。付帯施設に魅力はなく、料理はほとんど団体向けの料理で変化がない。

 地元金融機関においては運転資金を何度となく投じてきたが、改善の見込みがないため、コストカットを強く求めてきている。しかし、
経費削減を続けたところで限界があり、抜本的な集客アップ策が講じられないまま、今に至るというケースが多い。

 デフレの時代だとはいえ、価格が安いというだけでは集客には結びつかない。低価格帯の旅館は競争が激しく顧客のコストパフォーマンスの良さが常に求められる。

 最近勢力を強めている一部のチェーン店では、その魅力は首都圏からの格安なバスというアクセス上の優位性であり、料理の質はともかく好きなものを好きなだけ気軽に食べられるバイキングであったりする。

 ところが既存の苦戦を強いられているところは、肝心な対象顧客のコストパフォーマンス上の満足感を全く計算することができないである。

 何度となく述べてきたが、待っていればそれなりの客数を確保できる時代ではなくなったのである。たとえどのような料金帯であっても、客は旅館を選んでいる。

 旅館はそれぞれの対象顧客が、旅館を選ぶ基準について、明確な予想をあらかじめ立てる必要がある。

 これを商品のリニューアルの柱としていくべきである。「選択と集中」ということばは古い感があるが、何もセールスポイントを作り出せないのでは集客が減っても当然だ。自らが動き、旅館を変えていく力があるかどうかである