第315回 復興のあとのシナリオ

 北関東および東北地方を中心に、営業再開の目途がたたない旅館が多い。
 
 また、直接の被害はなくても、計画停電や重油の不安定な供給、交通アクセスの影響や自粛ムード、インバウンドの大量キャンセル等により、大幅な集客減が続いている。

 現場の状況が個別に大きく異なるため、今後の見込みについては一概に言えないのが現状だ。

 そこで今回、過去の災害復興の事例がどれだけ参考になるかは未知数だが、災害を契機に見事に再生を果たした旅館があれば、逆に二度と日の目を見ることがなくなった旅館もある。

 再生を果たしたある旅館は、休業時から今後のマーケットについて仮設であるが自ら設定した。

 その結果、ますますの団体客の落ち込みと単価ダウンが見込まれ、地元直セールスでは競合旅館の安売り合戦が激化するだろうと踏んだ。

 このシミュレーションを事前に行い、受ける料金のラインを明確にした。

 過去には営業担当者が何としても成約に持ち込もうとしてダンピングをした結果、大幅な赤字を計上してしまった経緯がある。

 経営者は赤字が出ることは、何となくわかってはいたが、当面のキャッシュフローにはプラスになるだろうと黙認していた。

 ところが、このパターンが日常化し、地元団体客の金額が地域全体で押し下げた格好に落ち着いてしまったのである。

 この状況に巻き込まれてしまうと、自らの首を絞めることになると判断した経営者は、いち早く団体客の最低価格の決定とともに、ネット系の個人客と小グループ客へ、ターゲットを移行していったのだ。

 いまままで団体客の二次消費といううまみを享受していたが、もはやそのような時代は二度と来ないと見切りをつけた。

 このときに旅館自体が、大きな変化を自らすることができるかどうかが、存続の分岐点になったのである。

 今後、観光関連の復興にかかる時間は誰もわからないが、ますます提供商品の品質を、常に変化する顧客のニーズを的確かつ迅速に捉えて対応したところにのみ、客が集中していくことだろう。

 変化の予測とそれを見越した変化対応力が一層求められるのはまちがいない。