第295回 「ブランド」を作り上げる

 経営がこの先継続不能となった企業に対し、マスコミは経営不振に陥った経緯とその必然性について述べている。

 これを旅館業に置き換えると、旅館を取り巻く外部環境の変化、すなわち団体客から個人客へのシフト、バブル崩壊から始まった設備投資にかかる資金回収の誤算、そして金融機関との対峙等々である。

 これらうまくいかなくなった理由付けは、実は簡単だ。 しかしこれを繰り返したところで、さてわが旅館はこれからどうして行けばいいのかということとは別の問題だ。

 今、まさに必要なのは、「経営不振に陥った必然性」について分析することよりも、わが旅館が成功するビジネスモデルと、それを裏付ける必然性を作り上げていくことである。

 これには当然今背負っている様々な現実的な条件を正面から捉えていくことから始まる。つまり、経営状況全般、設備状況、提供商品、立地、金融機関の対応等である。

 これらを踏まえたうえでの経営(数値)計画作成と、これを達成させるためのアクションプランおよび実践となる。

 しかしこんなことはすでに実施しているという声が聞こえてくる。肝心なことは、これが何らかの理由でうまく機能していないという現実があり、これを繰り返しているという負のスパイラルが働いているということだ。

 では、客観的に見てどんな旅館に顧客は流れていくかということであるが、「ブランド力」があるかどうかという要素が非常に大きい。 このブランド力は生き物であり、老舗旅館が今は見る影もないといった現象もあるし、逆にあっという間に名が知られるようになったというところもある。

 「ブランド力」は、その旅館の良さが顧客をとりこにするレベルのものが必要だ。だから、そこそこのレベルでは中途半端なのであって、ここまでやるかといったパワーが顧客に伝えられるかどうかがカギである。

 こんなことは表面をデフォルメすることで邪道だとお叱りを受けることを覚悟で言えば、数ある旅館の中で、ぬきんでて目立つ存在になることが必要だ。その目立つ内容は、旅館のオリジナリティであり、自ら作り上げるしかないのである。このパワーが新しいブランドを生む。