第257回 口コミサイトから見える旅館の現状

今年はネット系エージェントからの送客の伸びに、注目が集まった。個人客が予約を入れるまでのひとつのプロセスとして、まず行きたい観光地のなかで、料金や旅館の特色等から候補先を複数ピックアップする。そしてその旅館の口コミサイトを開き、評価点数と口コミのコメントを見る。

ここで大方の絞込みを行った上で、旅館のホームページを確認し、再びネット系のエージェントから予約を入れるというパターンが多い。

これらの現状を検証しようと、ある大規模旅館で年間の入込み動向を調べてみた。現場スタッフの感覚では団体客が減り、個人客が増えつつあるものの、依然として団体客が主流であるという意識が強い旅館である。

調査の結果は、組数で見ると組み人数4名以下が7割で、5名以上の割合は3割に過ぎない。ところが延べ人数で見ると、4名以下、5名から10名、11から40名という区分で、ほぼ3割ずつを占めている。つまり、団体を取ればまとめて業務をこなすことができるため、営業も内部のスタッフも団体に目が行ってしまっているのだ。

したがって、この旅館の経営者は口コミサイトの結果はあまり気にせず、もっぱら団体客のコンパニオンや二次会の手配、旅程時刻の確認にはとりわけ気を使っていた。

しかし実際には、個人客の口コミとして、「天ぷらがさめている」「ベランダにゴミが落ちたままだ」「接客係の態度がぞんざいだ」といった感想がネット上で公開されている。そして問題なのは、同じ類いの口コミが複数にわたって継続していることである。

今、団体客一本でやっていける旅館は極めて少ない。そのようななか、個人客が自分に適した旅館の品定めを行っており、その結果が逐一口コミサイトで公表されているのである。

遊興歓楽タイプの大規模旅館は一刻も早く団体客オンリーのオペレーションを見直すことである。

そのためのガイドラインとして、口コミサイトからのクレームを、経営者が先頭に立って解消するしくみをつくり、全社体制で取り組むことだ。

大手エージェントからの返室を、速やかにネット系の残室に振り分けることだけが、個人客対応の仕事ではない。