給料の話は常に「もらう側」の話題ばかり、初任給はいくらだの、昨年よりボーナスいくら減っただの、支払う立場から言えば、いささかウンザリである。
経営者か否かは、給料の話をすれば、すぐわかる。
給料を「手取りの額で考える」のはサラリーマン。彼らが言う「月給25万円」とは社会保険料や税金などの負担をプラスするので額面30万円となり、経営者が言う月給とは、こちらのことを言う。
だが、あくまでサラリーマンの意識は「自分は会社から25万円の給料をもらっている」である。
「こんなに働いて、給料はたったの25万円か…。バカらしいったらないね」などと言っている社員がいるが、そんな社員を養っている経営者のほうがよっぽどバカらしい。
一般に会社が社員に支払っている人件費、その人一人にかかる経費という意味では、その給料の数倍となるのが現実である。
社会保険料の半分は会社持ちだし、交通費、福利厚生費、水道代や光熱費、消耗品費、会議費、飲食費など、人件費比率30%の会社であれば、会社は給料の約3倍の人件費を社員に払っている。
つまり、経営者の本音は、「とりあえず、今もらっている月給の3倍」は働いてもらいたい。
だから「会社はあなたに毎月90万円かけている」と具体的な数字を明示した方が分かり易い。
すると社員のほうも「そうか」と頷(うなず)いてはみるが、まぁ、会社だから当然だと、残念なことに何ら意識は変わらない。心のどこかに「給料は天から降ってくる。じっとガマンして毎日通っていれば、必ず月末には降ってくる」という“サラリーマン意識”が残ったままなのだ。
この風潮は、労働組合はもちろん、学者も、マスコミも、評論家や政治屋さんといった批判屋も、労働者第一優先で基本一緒だから、微々たる給料を支払う立場にある中小企業の親父は、何とも辛い。
やっとの思いでボーナス出して、誰からも感謝されず、当たり前どころか不平不満のネタにされる。
だからいつも、中小企業の社長さん、ボーナス時になると「胃が痛い」と言っている。
会社員の給料は公務員と違って、会社の売上金から出ている。
25万円という現金をもらうためには、どれだけ仕事をすればいいのか。
実は、会社がかけている90万円を稼いだからといってOKではないのだ。
この額は人件費30%を賄う金額に過ぎないのであり、商品原価、宣伝広告費、通信費、旅費交通費、事務所費など様々な経費がかかっている。
つまり、人に関わる月90万円という経費は、最低300万円の売り上げを上げないと出てこない。
毎月手取り25万円をもらうためには、毎月300万円を売り上げてはじめて実現することができること、サラリーマンは誰も知らない。
もし、君が個人事業者だと仮定してみたら・・・・・君は会社という組織に属さず、何もかも1人でやって、25万円のお金を月々コンスタントに手に入れることができるか?
「今もらっている給料は、オレの分だと威張って受け取れる性質のものではないこと。会社の慈悲なる負担の部分がかなり大きいのだ」と、社員の人が少しでも感じてくれたら、中小企業でも、経営者冥利に尽きるというものである。
2016年10月16日
カテゴリー:飯島賢二のコラム