第686回 せこい都知事を辞職させた、張本人は?

米紙ニューヨーク・タイムズは、舛添要一東京都知事が政治資金流用などの疑惑で辞職を決めたことについて「sekoi(せこい)」という日本語を紹介しつつ報じた。「今回のエピソードを言い表すのに最も頻繁に使われた言葉は恐らく『せこい』だろう」と指摘し、事件の本質以上に注目された。

今回の政治劇を見て思ったのは、「せこい知事を攻撃した張本人は誰か?」ということだろう。

都庁には3万もの抗議があったそうだ。すべて詳細は不明だが、高齢者からの意見が多かったようだ。当然、東京都民ではないからかもしれんが、僕の周りでわざわざ抗議の電話やFAXした人、殆ど知らない。「全くせこい奴だ、それより、ちゃんと仕事しろよ」という人が多かったようだ。

話がみみっちいし、けち臭いし、見苦しいし、要は「せこい」そのもの。

無教養で、バカげたニュースが1日中垂れ流される中、多くの都庁マンは真面目に仕事している。

 

テレビに釘付けになり、「大問題だ」と平日のワイドショーとか見てるのも、リタイアした暇な人が多い。

暇な高齢者が「世論」を創り、マスコミは暇な高齢者に迎合して、くだらない質問を繰り返す。

都議が聞く「世論」も年寄り中心となり、あっという間に知事辞職へ追い込んでしまった。

最近の高齢者がつくづく「セコい」と思うのは、「夜郎自大」が如く、半端な正論を振りかざすことだ。

居酒屋で昼間から飲んでる年金生活者が、「舛添やめろ、五輪いらない」と言ってる。

彼らはすでに、リアルな世界から逃げ切っているから、勝手言い放題なのだろう。

この調子だと、都政が年寄りの「おもちゃ」にされる。

都政どころではない。現行日本の選挙制度そのものの問題になっている。

日本の選挙は、数において圧倒的に多い高齢層が、投票率でも若年層を凌駕しており、高齢者優遇の政策になりがちな「シルバーデモクラシー」となっている。

 

現在我国の有権者人口は1億348万人。そのうち20歳~39歳 2,901万人で、対有権者人口比率 28%。同様40歳~59歳3,309万人、32%、60歳~4,138万人、40%、60歳以上の高齢者世代が選挙権の40%を握っているという状況だ。

ちなみに、2014年の衆議院議員選挙を例にとると、60代の投票数(有権者数×投票率)は1,313万票である一方、20代は414万票にとどまり、投票数では20代は60代の3分の1となっている。

 

この状況を受けて昨年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、年齢満18年以上満20年未満の者が選挙に参加することができること等となり、本日、平成28年6月19日から施行される。

実に70年ぶりの選挙権引下げとなり、歴史的な出来事だが、18歳、19歳の人口、約240万人が有権者全体に占める割合は僅か約2%であり、有権者全体のバランスを大きく変えるものではない。

18歳、19歳が投票に参加し、若年世代としては非常に高い投票率(仮に60代と同じ約60%とする)になったとしても、投票数は60代の約4割にとどまる。根本的に選挙に与えるインパクトが限定的であるため、18歳選挙権が日本の社会構造をドラスティックに変えるとは言い難い。

依然として政治家にとっては、若者よりも高齢者の声を優先した方が「得」である状況に変わりはない。社会保障の担い手である「若い世代」を置き去りにした議論を進めていくことは、持続可能な社会保障制度の再構築は不可能だと考える。

偏狭な「シルバーデモクラシー」を排除すべき「未来への大きな力」が必要な時である。

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2016年6月19日IKG(~飯島経営グループ)
カテゴリー:飯島賢二のコラム


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