第650回 ゲスの勘繰り 「ノーベル賞」

イイケン先生の『恐縮ですが…一言コラム』

 

ノーベル賞の受賞者の発表は毎年10月頃に順次行なわれ、ノーベルの命日である12月10日に授 賞式が催される。今年もその時が来た。
今日(10/10)現在、生理学・医学賞が北里大学の大村智特別栄誉教授、そして物理学賞では、東京 大宇宙線研究所の梶田隆章教授が受賞、連日の日本人の受賞に、国内外から賞賛と驚きの声が多 数寄せられている。
これで日本人の受賞者はアメリカに国籍を動かしている2人を入れて24名となった。
21世紀以降、自然科学賞部門の受賞者国別で、日本は米国に続いて世界第2位を誇っている。

 

なぜこれほど日本人受賞者が多いのか…?
「スポーツの祭典○○ピックとか、××遺産ではないけれど、支援・拠出金の額がものをいい…」
もっぱら根付いた捻くれ根性ゆえ、もしや「ノーベル賞、おまえもか!」とばかり、色々調べてみた。

 

結論から言えば、ノーベル賞の運営は「ノーベル財団」がこれに当り、1900年「ノーベル財団規約」が 定められ、厳格な管理のうちに運営されている。
ダイナマイトの発明で巨額の富を得たアルフレッド・ノーベルの遺産の90パーセント(遺産総額、日本円にして約207億円)が基金となり、現在もその運用利子と、それを株式や不動産に運用した運用益 を、賞金や選考費用に充てている。
寄付の申し出はたくさんあるが、政府や公的機関からの寄付は一切受けず、民間からの寄付も厳選、 支援・寄付金等を、賞の選考に全く影響させない仕組みになっているとのことだった。
世の中斜めから見た小生の「ゲスの勘繰り」は、木っ端微塵に打ち砕かれた。

 

お詫びを兼ねて、ここでノーベル賞の、凄い薀蓄である。
2013年の年次報告書によると、ノーベル財団の職員はたったの11人。
少数精鋭のチームによって、ノーベル賞の莫大な資金は運営されている。
一般的に「ノーベル賞6部門」といえば、「物理学賞」「化学賞」「生理学・医学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」を指す。
しかし実は「経済学賞」の正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェ ーデン国立銀行賞」。1968年にスウェーデン国立銀行によって作られたもので、ノーベルの遺言によって創設されていないため、厳密にはノーベル賞ではなく、これだけは日本でも課税の対象である。
ノーベル賞の授賞式はスウェーデンのストックホルムで行われるが、ノーベルの遺言により平和賞の 授与式だけはノルウェーで行われている。理由は明らかにされていない。
受賞者は記念メダルと賞金。賞金額は、「ノーベル財団」の資産運用の成果によって決まる変動制。
運用益から元金と諸経費分を確保した残り75%が賞金に充てられている。
今回の梶田隆章さんは、マクドナルド氏と共同受賞なので、1/2の500万クローナ(約7,280万円)。
そして、大村智さんは、キャンベル氏と共同の開発、もう一人の生理学・医学賞・中国の屠呦呦(トゥ・ ヨウヨウ)氏は単独なので、大村さんは250万クローナ(約3,640万円)という計算になる。
ノーベル財団、総資産は今の相場で350億円くらいとなる。リーマンショック前は500億円くらいあっ たそうだが、株や債券といった金融資産の運用で、リーマンショック以降、かなり苦しい状況のようだ。
(蛇足だが…「京都賞」を出している稲盛財団、総資産は600億円と言われている)

 

 

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2015年10月11日IKG(~飯島経営グループ)
カテゴリー:飯島賢二のコラム


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